僕の下宿生活-美母娘vs.女教師(著:七海優、フランス書院文庫)

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「お・は・よ・う。朝ですよー、信幸くん」
目覚めた僕の前にはエプロンからこぼれる胸が!
同級生の家での下宿生活は三食賄い「初体験」付き!?
自慰を目撃し、家主の真理子さん(38)と結んだ姦係。
蒼さの残る躰で挑発する美娘(18)は純潔を捧げ、
僕の生活を心配した先生(25)まで家庭訪問に来て……(引用元:Amazon)
★★★★☆ 新人のデビュー作としてはまずまず, 2015/2/11
フランス書院文庫の官能大賞に応募し、新人賞を受賞したうえでのデビューならば、その応募作であるならば、ひとまず上々の出来映えと言えるのではなかろうか。3人ヒロインながらそれぞれにちょっとずつフックを効かせるために紙面を細々と費やした結果、終盤以降ではやや取り纏めた感じが出ていたり、ヒロインの立ち位置とクライマックスの描写にズレを感じたり、何より意気込みが空回りして不要な描写や記述が所々にあったりする荒削りな面は散見されるのだが、それらは総じてテクニックや経験から自ずと修正されていく点ばかりでもあり、内容のあるドラマをきちんと構築しようと試みた結果と見たい。むしろ今後の伸びしろを感じたことの方が好材料とも言えよう。
【千春】 25歳の女教師
学校で千春が主人公の悩みを聞くところから物語は始まる。官能的な場面も最初に訪れるが、千春は最もサブなヒロインと言えよう。主人公の境遇に自身の過去をダブらせて同情とも憐憫とも言える感情が愛情に昇華したような好意を主人公には向けるのだが、その後の展開にはあまり絡まず、最後に生娘を卒業する(させられる?)くらいである。
【詩織】 18歳の幼馴染みで同級生
母娘ヒロインの娘の方だが、快活で勝気なツンデレ風味のキャラは最近ではややステレオタイプ化してきたところか。幼馴染みらしく主人公への想いが伝わらない不憫な一面もありながら、健気に頑張っているところもあって悪くない。
【真理子】 38歳の淑やかな未亡人は詩織の母
主人公の想い人は真理子である。訳あって真理子&詩織の母娘宅に同居することとなった主人公の、その秘めたる想いで悩むことが千春の、そして詩織との接近の要因となり、それは未亡人の空閨が満たされない真理子の悩みでもあったことが話の本線となっていく。本格的な登場は中盤からだが、真理子との場面が最も多く、官能成分も高い。
母娘に女教師を加えたことで学校内でも戯れの場面を設けることには寄与したものの、正直なところ千春の役割は詩織1人で賄うことも可能との印象が残る。千春に加えて詩織も実は生娘なのだが、破瓜の演出が劇的に異なるならばともかく、そうでもなければ生娘は2人も要らないであろう。何より千春との最初で最後の合体が巻き込まれるような4Pで、それが結末というのはクライマックスよりも蛇足感の方が強い印象でもあった。
ただし、キャラ立ちや官能描写の良さは感じたし、相応に淫猥度も高かったので、次作以降への期待は充分に持てる内容ではあったと思う。
◆『僕の下宿生活-美母娘vs.女教師』のレビュー掲載元
第12回 フランス書院文庫官能大賞 新人賞受賞作品
「黒本」では、ほぼ毎月と言っていいペースで新人さんが出てきます。
……ここでは名義変更された方も一括りに「新人さん」としておきます。(^^;)
ゼロの月もありますから、年間で大体10名前後といったところでしょうか。
そんな中で原稿を応募して、賞を獲って、そして1冊の本として出てきたのが本作ということですね。
出版社に原稿を持ち込むというよりも各レーベルが主催する「○○文庫大賞」
小説家に成れるかどうかの瀬戸際な訳ですからね。
ですから、考え得ることを盛り込む、可能な限り詰め込む……どうしたってそうなると思いますよ。
で、「あれも入れておこう、これもいいかも」と思いながら執筆していると推察するのですが、冷静になって傍から見ると思ったほど重要でもないし、よくよく見れば余分かも、という部分も散見されてしまう……仕方ない面もあると思います。
自分のレビューだって本来ならもっと短くても充分に済むと思いますし。(汗)
ブラッシュアップというのは加えることだけではなく削ることでもありますが、自分の思いが詰まった応募作ならばなかなか削れませんよ。削るのが怖いですよ。そして、小説はたぶん加えるよりも削る方が難しいのだと思います。
そのため、程々に改良したら(受賞作なら早く出版したいでしょうから)作品として出てくるのでしょう。
にゃらさんのブログで紹介されている本作の投稿記事です。
七海優「僕の下宿生活 美母娘vs.女教師」(フランス書院文庫、2014年8月、表紙イラスト:川島健太郎)ネタバレ有り。御注意下さい。【あらすじ】両親を亡くし両親の友人である真理子に引き取られた信幸は、女性に囲まれた生活につい魔が差して彼女の下着でオナニーしてしまう。彼の態度の異変に気付いた担任の千春は彼を呼び出すと、性欲の処理をしてあげる事になるが…。【登場人物】佐伯信幸18歳。高校3年生。1年前に両親を事故...
七海優「僕の下宿生活 美母娘vs.女教師」
そんな新人さんらしさを感じさせるデビュー作でしたが、次への期待感はしっかりありますから、これからも作を重ねていってほしいですね。(^^)
七海優 フランス書院文庫
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七海優「僕の下宿生活 美母娘vs.女教師」
コメント
手堅い作品
新人さんということで見ることが前提ですが、物語が無難というか、手堅い感じでした。
誘惑系のアイテムをすべて盛り込んだといったらいいのでしょうか。
主に女性側の心理描写で物語は進んでいきます。
本当に女性が思っていることではなくて、男性が女性に「こんなうふうに思ってほしいなあ」という描写が小説の醍醐味だと勝手に考えているのですが、その点でもうひとつ足りない印象でした。
いろいろな作家さんのブログやツイッターでも作品を仕上げる段階で削る苦しみを乗り越えようとしているのはわかります。これも、あれもと言いたいことはたくさんあるのに、ページ数と読み手は限られているので仕方なく削る。不完全燃焼な感じがしてしまいます。一方で、条件の狭さを楽しむような作家さんもいるようで、後者のように考えることができれば書くことが楽しいでしょうね。
全く話は違いますが、最近、主人公やヒロインに大家さん、管理人さんキャラを取り上げる傾向が多い気がするのは私だけでしょうか。それぞれ物語の内容は全く違うのですが、テイストが似ている気がしています。
追伸 ツイッターでフォローをしたお陰でブログを拝見しやすくなりました。ツイッターを軽視していたのですが、ちょっとしたメモやお知らせにはいいものですね。
官能小説の醍醐味
コメントありがとうございます。
>男性が女性に「こんなうふうに思ってほしいなあ」という描写が小説の醍醐味
仰る通りですね。男の願望ファンタジーと個人的には称していますが、これによって男性向きの王道官能小説と、そうでない昨今の女性向け官能小説が大きく分かれると申し上げても過言ではないと思います。
女性から「そんな訳ないでしょ」とツッコまれようとも、男が望む女性像があるから我々の官能小説なのです。(妙に力説-笑)
新人さんですから、これから作を重ねる度に加減を習得するのだと思います……そのためには作品が相応に売れないとイカン訳ですが。(^^;)
>主人公やヒロインに大家さん、管理人さんキャラを取り上げる傾向が多い気がする(中略)テイストが似ている気がしています。
元ネタとして高橋留美子先生の名作漫画『めぞん一刻』の設定と精神が脈々と受け継がれているのだと勝手に解釈しています。管理人さんが未亡人だとさらに、ですね。今や鉄板設定として広く用いられるのでしょう。
また、Twitterをフォローしていただいたそうでありがとうございました。
情報入手ツールとして活用するには重宝しますよね。
めぞん一刻はいい作品です
>元ネタとして高橋留美子先生の名作漫画『めぞん一刻』の設定と精神が脈々と受け継がれているのだと勝手に解釈しています。
私もその説に同感です。
官能小説でヒロインの設定を考えるとき、例え未亡人であっても、アラブの大富豪の娘とか、ヨーロッパ貴族の末裔とか、難事件を解決する有能なスパイとかでは、いまいち興奮しない気がします。
そこで、ヒロインや主人公のプライベートエリアで物語を組み立てるとなるとかなり制限があるので、案外『めぞん一刻』のような設定がドキドキ感も高めながら、腑におちる感じなのかもしれません。
第一巻が発行されて30年も経つ作品が、未だに官能小説の中で生きているのは、感慨深いです。
管理人さんのエプロン
コメントありがとうございます。
最近のコミックでも大家さんや管理人さんのエプロンには大体において「PIYO(ひよこ)PIYO」と入っていますから、その浸透振りと言いますか、今やスタンダードとも言えそうな定着振りには驚くくらいです。
たぶん『めぞん一刻』世代の作家・漫画家の先生方も少なくないのだと推測します。
苦学生の五代クンと響子さんという年上カップル(しかも未亡人)というドキドキ感のある恋の行方に三鷹といった恋敵がいて、それを一刻館の面々が面白可笑しく見守っているという構図はオトナ向けのラヴコメとして最強の設定でしたから、これを超えるのは少し難しいのかもしれません。
管理人さんが人妻やバツ1でもアリとは思いますが、未亡人というところに亡夫をい続けるヒロインの気高さが加味されるのと、そんな未亡人の心を射止めることがヒロインの癒しにもなるというドラマ性と愛情成分の昇華がありますよね。
思えば昨今の誘惑系官能小説の基本設定が学生(少年)主人公と熟女というのも何らかの形で影響を受けているのかもしれないとすれば恐るべき貢献度とも言えます。
DSKが『めぞん一刻』を紹介・引用する際は、ほぼ毎回「我が青春の金字塔」という前振りが付いてきます。(笑)
修正
「亡夫を想い続ける」の間違いでした。(汗)