草凪優先生の官能メインストリーム宣言

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殺人、絶望、逃亡――どん底で男は女を求める。広告代理店で活躍、家庭も円満だった梶山一人は、爛れた不倫の末、奈落の底へ。離婚、退職勧告の後、場末のバーのマスターに成り下がり、借金地獄に。さらに、事件が起きる。死を覚悟したとき男は、惚れた女たちに会いにいく――。
性に溺れた男と女の物語。超人気官能作家・草凪優の新境地。350枚、渾身の長編書き下ろし。文芸評論家・池上冬樹は「これは官能小説の域を超えている」と記し、女性書店員&読者からも感嘆の声が続々!草凪自身「この作品がダーニングポイントになった」と語る。表紙デザインはマッチアンドカンパニー・町口覚、写真は野村佐紀子。カバーにも力が漲る。官能小説を超えた「センチメンタル・エロスの傑作」が誕生!! (引用元:Amazon)
2014年10月発売『
10月の文庫新刊『堕落男』によせて
私の仕事 草凪 優
http://j-nbooks.jp/jnovelplus/columnDetail.php?cKey=10
官能小説に関する興味深い分析から始まり、自らの今後の立ち位置を明確にしようとする威風堂々とした宣言だと思いました。
活字のエロスの歴史をひもとけば、富島健夫、川上宗薫、宇能鴻一郎といった官能小説のメインストリームと、そのカウンターとして登場したフランス書院、マドンナメイトといったポルノ専門文庫の興隆があげられる。
このふたつの対立構造は重要だ。
小説の1ジャンルとして確立された官能小説と、性描写だけを特化させたポルノ専門文庫は、たとえば、にっかつロマンポルノとアダルトビデオの関係に似ているかもしれない。
(中略)
ポルノ専門文庫の興隆が、活字のエロスを広く普及させた歴史的事実を認めないわけにはいかないにしろ、その存在はあくまでカウンターであり、メインストリームに対する傍流なのだ。
そこには小説としての広がりも奥行きもありはしない。むしろ、ないからこそ価値がある。日陰にあってこそ底光りする、変態性欲者の執念みたいなものなのである。
しかし私は、小説として広がりも奥行きもある活字のエロスを渇望してしまう。
官能専門ではないレーベルから多く出され始めた草凪作品に漂っていたモノが見えてきた気がしました。
私の今後の仕事は、官能小説を傍流からメインストリームに戻すことに力点が置かれることになるだろう。官能小説というジャンルからはみ出しているのではなく、私こそが官能小説の王道を行く者であるといずれ宣言したいと思う。たったひとりしかいなくても、ジャンルを正当に背負っているのは私のほうである、と。
ポルノ専門文庫の枠組みから抜け出せないでいるDSKからすると何だか遠くへいってしまわれるような草凪先生ではありますが、先生には先生の思うところがあってのことだと分かった訳ですから、ここはむしろこれからの草凪作品が具体的にどこへと向かうのか、そして、どこまで高みに昇られるのか、その行く末に大いなる期待と応援を込めて見届けたいと思うのであります。
草凪優 実業之日本社文庫
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